夏・冬のイベント軸に家電事業を復活!JA松本とコスモスの「共創」で実現
(長野県松本市)
「家電事業を組合員が喜ぶ形で復活させたい」――。2012年3月、JA松本ハイランド農業協同組合(長野県松本市)はコスモスベリーズに加盟した。加盟前の家電事業は長らく売り上げが低迷し、事業規模縮小の岐路に立っていた。乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負に出たのが加盟後の「展示会(特招会)」。ヤマダデンキ店舗を活用してのイベント売り上げは400万円を超えた。リアル店舗でのイベントはJA松本の家電事業に活力を与え、コスモスとの「共創」は事業復活の大きな要因になった。
▲7月20日に開催された特招会の模様
●家電事業のターニングポイント
ヤマダデンキの店舗を活用したイベント
松本ハイランド農業協同組合(以下JA松本)は長野県松本市南松本に本店(本所)を置く農業協同組合である。
▲会場となったヤマダデンキイオンタウン松本村井店
同組合の扱い商品で有名なのは、昼夜の温度差が大きい環境で育てられた農産物。ここは標高600m~1,000mの準高冷地に位置しているので、瑞々しく味わい深いと評判な地産品が多く、中でもスイカやネギ、ジャガイモやリンゴ、ブドウなどが知られる。
2020年11月にはJA松本と松本市農協、塩尻市農協が合併。合併後の組合員数は約4万1,000人と、長野県下でも有数の組合規模になっている。
JA松本がコスモスベリーズに加盟したのは2012年3月。アナログ停波によるデジタルテレビ特需が急速に萎んだ年で、同年の家電市場は前年比約11%減の7兆4,800億円と大幅にダウンした(GfKジャパン)。
当然、JA松本の家電売り上げも厳しさを増した。当時の状況について、 LPガス住設課の市川興治氏はこう話す。
「家電事業を縮小し既存客の修理対応とアフターサービスに絞り込むという声もあったが、それでは継続して家電を買い替えていただいたお客様にご迷惑がかかる。我々担当者レベルではできるだけ事業を継続して盛り上げていこうと考えていた」。
▲特招会(JA家電製品大展示会)の案内(JA松本のホームページ)
そうした時、「渡りに船」と取引先から教えてもらったのがコスモスベリーズの存在だ。国内大手、中堅家電メーカーだけでなく、海外メーカーの家電製品も仕入れられ、ヤマダデンキのバイイング力をバックに量販店並みの売価を実現できる。
コスモスベリーズが提供するメリットはそれだけではない。2012年度からスタートした、ヤマダデンキの店舗を活用したイベント(特招会)を展開できるというスキームも家電部門を担当するLPガス住設課の職員に響いた。
イベントをきっかけに家電事業を再び軌道に乗せようと、LPガス住設課の職員だけでなく組合挙げて特紹会に取り組む。その熱意が実り、初のイベント売り上げは400万円を超えた。
●JA松本とコスモスの「共創」の取り組み
▲特招会の受付コーナー
▲特招会の接客コーナー
JAが価格提案・納品・設置・アフター・決済まで
JA松本とコスモスベリーズの提携について、JA松本のホームページでは次のようなコメントが掲載されている。少し長くなるが引用しよう。
JA松本ハイランドでは、ヤマダ電機卸業者「コスモス・ベリーズ(株)」と提携し、ヤマダグループに加盟し、ヤマダ電機価格で家電製品を提供できるようになりました。
組合員の皆様への価格提案・納品・設置・アフターもJAが全て行い決済もJA口座振替ができ、「夢あわせポイント」も加算されます。
現在はヤマダ電機を会場とした「JA家電大展示会」を年数回開催しており店頭にて豊富な商品からお選び頂きお買い求め頂けます。
ちなみに夢あわせポイントとは、同組合が提供する独自のポイント制度。ポイントはJAの直売所やガソリンスタンドなどで利用できる「JAまごころ商品券」と交換できる。
▲JAまごころ商品券(右)
JA松本とコスモスベリーズの提携は、お互いに協力して新たな価値を生み出す「共創」関係と言っていいだろう。
▲ヤマダデンキのインフラを活用
家電市場の環境変化により、JA松本は自社の経営資源だけでは事業の限界を感じ外部のリソースの活用や協業を求めた。従来のビジネスとは異なる新しいサービスの開発や改善を狙ったものである。
一方のコスモスベリーズは共創のパートナーづくりで、卸売り上げや会員数を増やすなどといった経営資源を高めることができる。
この共創関係をベースに、JA松本は7月と11月の年2回、「特招会」を継続して開催し家電事業を軌道に乗せた。同組合の年間仕入れ額は、コスモスベリーズだけでも、1,000万円を軽く超える規模に拡大する。
近隣のヤマダデンキの店舗に商品を取りに行く「直取り」なども活用しており、ヤマダデンキのインフラを活用する取り組みで家電事業を復活させている。
7月20日、夏の特招会を開催
そうした中で7月20日、恒例となった夏の「特招会」が開催された。会場は「ヤマダデンキイオンタウン松本村井店」、動員計画は60組、売り上げ計画は200万円とした。
まず、特招会の案内は開催1カ月前に自社のホームページにアップした他、広報誌でもPR。
また、各支所の営農生活課では「ふれあい活動担当者会議」で集客を依頼、日常のLPガス保安点検では7名のLPガス住設課職員による声掛けを徹底した。
イベントでの最重要課題は顧満足度を高め、JA松本でも家電製品を扱っていることを多くのお客様に知ってもらうこと。
JA松本は過去20回ほど特招会を開催している。その経験からイベントでのお客様の顧客満足度を高めるには、「効率の良い接客と受付カウンターでのスムーズな決済がポイントになる」と考えていた。
当日はJA松本のお客様用の接客コーナーや受付コーナーを開設。受付コーナーは来場者名簿に氏名および来場人数を記入する役割で、常時2名の対応とした。
また、ヤマダデンキ店舗の2つの出入り口には、農協のお客様の接客と決済をスムーズに行うために職員を2名配置した。
▲店舗出入り口に職員を配置
関係職員は当日の午前8時30分に芳川支所に集合。その足で9時30分、ヤマダデンキに入店し受付の準備を行い、9時50分には田中一成LPガス住設課課長が展示会の注意事項などを改めて説明した。
▲田中一成課長
▲角田和弘氏
リアル店舗でイベントを開催するメリット
特招会の注意ポイントとして重要なのは販売価格だ。イベントでは基本的にヤマダデンキの店頭表示価格に倣うが、割引表示のある商品については電気担当の確認の上で売価を決定。ヤマダポイントは付かないが「夢あわせポイント」の対象となる。
決済は原則として口座決済とし、当日の現金授受は行わない、商品については必ず在庫確認をして法人カウンターまで商品を持参する。
一方、設置が必要な商品や後日配達についても在庫確認し、納品日については若干日数をいただき後日配送とする――。
田中課長は特招会の狙いをこう話す。「リアル店舗はお客様に対して直接接触できる場所。最新の家電製品やお客様のニーズに応じた商品や使い方のアドバイスなど、お客様に寄り添って提案できるのが大きなメリット。ヤマダさんの店舗を借りたこのイベントは当組合の最重要の取り組みです」。
当日の特招会の来場者数は41世帯60名。夏モノのエアコンや扇風機、サーキュレーターが好調に推移した。LPガス住設課の角田和弘氏は「特招会に来られなかったお客様にも多数の注文をいただいている。特招会のフォロー活動で目標金額の200万円を達成したい」と話している。