新サービスで「本業」にプラス、家電とLPの「即湯サービス」提案
(徳島県鳴門市、中岸真史専務)
LPガス業界はオール電化や都市ガス攻勢、さらにはガスユーザーの高齢化も深刻な問題になってきた。LPガス需要の低下による売り上げ減少にどう立ち向かうか。中岸専務が打ち出したのは新サービスの展開だ。オール電化ユーザーを取り込もうと「即湯サービス」をスタートし、コスモスベリーズ加盟で家電事業にも本腰を入れた。
社内のモチベーションアップに気を配る
鳴門ガスがコスモスベリーズに加盟したのは2020年11月。きっかけは同年8月27日にテレビ東京で放送された「カンブリア宮殿」である。コスモスベリーズの画期的なビジネスモデルに触れたからだ。
「加盟店の皆さんは本業に家電をプラスして自社の事業や顧客を拡大している。丁度、燃料店の事例も出たので本当に参考になった。当社でも家電を扱うことによってお客様に喜ばれ、当社のガス事業を活性化する大きな材料になると考え、早速コスモスさんに問い合わせのメールを送りました」。
▲鳴門ガス本社
家電の取り組みについて、社内でも大いに議論した。お客様にとっても鳴門ガスの将来にとってもメリットの高い事業ということで加盟を決めた。1984年から家電販売に取り組んでいたが、価格面で大手量販店にはかなわず、大手量販店に対抗することが難しかった。
家電事業は再参入ということになるが、中岸専務は家電事業を軌道に乗せようと社員のモチベーションアップに気を配った。「我々ガス事業者にとって、家電はお客様との信頼関係を構築する重要な武器」と社内を説いて回った。
同社の社員数は50名で年商は約10億円。基本的に家電販売はガス営業のサービス担当者9名がカバーする。ターゲットは約9,000世帯の一般家庭用のユーザーである。
中岸専務の本気度が社内の雰囲気を変えた。サービス担当者は休憩時間などを利用してコスモスベリーズが発行する家電チラシ「いいもの特急便」を食い入るように見るようになった。家電の取り組みにおいて、中岸専務が重視しているのはトップダウンの指示ではなく、ボトムアップのやる気である。
「当社の顧客の7割はシニア世帯。手をこまねいていればガス需要は低下の一途をたどる。そんな危機感と、社内ではチラシを見ながら家電は面白い、やってみようという雰囲気になった」。
電化ユーザー対象の「即湯サービス」に注力
▲「即湯サービス」の案内
サービス担当者には年3回、お客様と直に接しお客様の意見を聞いて回ろうという社内ルールがある。その機会を利用して、サービス担当者は家電を扱い始めたというアナウンスを徹底している。
さて、同社の次の一手はコロナ禍で開催できなかった秋の大型イベントと、春と夏のミニイベントでの家電販売だ。さらに、LINEの顧客登録にも力を入れている。顧客には「いいもの特急便」のチラシデータをスキャンして定期的に発信。顧客登録数を増やし、デジタルの情報発信とアナログの人海戦術で家電の売り上げアップを図る考えだ。
一方、オール電化ユーザーを対象にした「即湯サービス」にも力を注いでいる。即湯サービスとはエコキュートや電気温水器が故障した場合、LPガスで対応するというサービス。壊れてもその日からお風呂やお湯が使えるようになるLPガスの機動力を生かしたユニークなサービスだ。
ガスのライバルである電力に塩を送るわけではない。「オール電化ユーザーをガスに切り替えるのは難しい。それならば180度発想を転換して我々もエコキュートや電気温水器を積極的に提案していこうと考えた」。オール電化ビジネスの取り組みでもコスモスベリーズの活用機会が増えそうだ。