テレビの「お困りごと」速攻解決!コスモス加盟は有効な「解約防止策」
(長崎県雲仙市千々石町、宮﨑和久専務)
ケーブルテレビ業界は2012年以降、世帯数で微増、普及率では横ばい状態が続いている。人口減少の影響はもちろん、主力の多チャンネル放送事業が伸び悩んでおり、新たなビジネスモデルの構築が求められている。こうした中で、長崎県雲仙市に本社を構える「ひまわりてれび」は2020年12月にコスモスベリーズに加盟、家電販売に乗り出した。ここ数年で薄型テレビの買い替え需要を確実につかみ、この1年間の仕入れ台数は150台を超えている。同社はなぜコスモスに加盟したのか。そして好調に推移する薄型テレビ販売の舞台裏も見てみよう。
▲ひまわりてれびの社内
●なぜ、CATV会社がコスモスに加盟したのか
視聴者の「解約防止」狙う
地上波放送の難視聴対策のインフラとしてスタートしたケーブルテレビだが、現在は地上波、BS、CSなどの多チャンネル、インターネット接続サービス、IP電話などといった様々なサービスを提供している。
▲宮﨑和久専務
ただケーブルテレビ業界は近年、大きな曲がり角を迎えている。特に、地方の人口減の問題は大きく、新たな視聴者の開拓はもちろん、既存視聴者の解約防止が差し迫った課題になっている。
さらに、インターネット配信サービスやスマートテレビの普及により、ケーブルテレビ業界の競争環境はより一層厳しくなっている。
総務省の「ケーブルテレビの現状」によると、国内のケーブルテレビ加入世帯数は2023年4月1日時点で3,162万世帯(前年同期比0.7%増)、世帯普及率は52.5%(同0.0ポイント増)だった。2012年から世帯数で微増、普及率は横ばいが続いている。
こうした現状の対応策について、ひまわりてれびの宮﨑和久専務は「お客様の囲い込みと一世帯当たりの付加価値化(単価アップ)がますます重要になってくる」と指摘する。
▲ひまわりてれびの本社社屋
特に、同社が重視しているのが「顧客の囲い込み」。その手段は、お客の日常生
活を維持するために必要なライフラインの確保だという。
「ライフラインのインフラ整備はもちろん、お客様の暮らしの困りごとに素早く対応する態勢づくりも大切」と宮﨑専務。ハードとソフトの両輪で暮らしのライフラインをサポートしていこうとの考えだ。
20年12月には家電販売、21年7月にはLPガス販売に取り組むなど、暮らしのインフラを着々と整備している。
「ガスや家電のサービス事業のメリットは顧客とリアルで接する機会が作れること。家電では、これまでもテレビやデジタルレコ―ダーの故障などでお客様から相談を受けるケースが多々あったが、そういった機会をチャンスと捉えた」。
ただ、家電やLPガス販売の取り組みはあくまで本業であるケーブルテレビユーザー囲い込みの手段。本当の狙いはケーブルテレビの「解約防止策」だという。
コミュニティチャンネルに注力
とはいえ、やり方次第では新規の契約が取れる。テレビの相談事で呼ばれるケースでは、その場でインターネットの動画配信や多チャンネルを提案し成約に至ることもある。
▲機動力で視聴者に密着
▲ホームページでもコミュニティチャンネルをアピール
「人口減でユーザーが自然に減っていくと手をこまねいていてはダメ。こちらから積極的にお客様と触れあう機会を作っていかなければ」と宮﨑専務は話す。
また、本業では地域のイベントやニュースを取り上げるコミュニティチャンネルに注力している。具体的に言えば、地域のお祭りやイベント、スポーツ大会、中学・高校の体育祭、野球やサッカー、バレーボール、話題のお店の紹介などの地域のローカル番組だ。
「他のメディアが参入しにくい地方のケーブルテレビならではの取り組みで、当社の差別化ポイント。地域ユーザーの関心の高いコンテンツで、取材の現場で加入を申し込まれたこともある」。
●家電の買い替えをしっかりキャッチ!
独自のヒアリングシートを作成
家電販売の新規参入組であるひまわりてれびにとって、特に注意を払っているのが商品の受発注の確認作業だ。一歩間違えると、お客とのトラブルを招き、不良在庫を抱えることにもなるからだ。
▲お客の要望にマッチした機種を納品
そこで、受注時に活用しているのが同社独自に作成した「家電販売ヒアリングシート」。お客から本社に家電の問い合わせ、買い替えなどの要望があった場合、受付担当者は必ずヒアリングシートに書き込むルールになっている。
記入されたヒアリングシートはすぐに現場の営業マンに送り、営業マンは問い合わせ客に連絡し、提案商品を絞り込むという段取りだ。
シートではテレビやレコーダー、エアコン、冷蔵庫、電話機、電子レンジ、炊飯器、洗濯機など8商品がチェックできる。商品のサイズや機能、容量など、希望商品のポイントが記入されるつくりになっている。
▲家電販売ヒアリングシート
「電話を受けた者が必ずしも家電に詳しいわけではないので、ヒアリングシートでお客様の希望を確認する。電話でのやりとりだけではトラブルの原因になるので、書面での確認がベターだと考えた」。営業マンはシートを元に、BFC.Netから該当する商品を検索し提案機種を絞り込む。
シートはお客のだいたいの要望が一目で分かるつくりになっている。例えば冷蔵庫。容量は150ℓ以下、150ℓ〜200ℓ(1人暮らし)、200ℓ〜400ℓ(2人暮らし)、400ℓ〜500ℓ(3〜4人暮らし)、500ℓ以上(5人以上)、その他機能では、「観音開き」「右開き」「左開き」「左右開き」「自動製氷」「その他」など確認事項が揃っている。
冷蔵庫の販売では家電販売のベテランでも「左開き」「右開き」を間違えるなど致命的なミスを犯すケースもある。同社は受注作業の基本に則ることで受発注にかかわるトラブルを未然に防いでいる。
テレビの例も紹介しよう。重要なのは画面サイズで、32V〜34V、37V〜45V、46V〜49V、50V〜59V、60V以上をチェックする。機能では、「Wi-Fi対応」「ユーチューブなどネット動画対応」を確認する。
▲発注ミスを防ぐ「注文書」
テレビの故障や相談、問い合わせがあった時に素早く対応するために42Vと32Vを常に3台ほど在庫している。「お客からの要望が特になければ、希望インチを聞いて、在庫している機種を納品する」。
42Vはシャープ製、32Vは東芝製の安価でコスパに優れた機種。「営業マンにはこの2機種の性能や特徴、セッティング方法などを覚えてもらっているので、テレビの買い替えでは受注から納品まで、その日のうちにスムーズに進む」。
社内に在庫しているのはテレビの他にエレコム製のルーターを30台ほど。これもまた、お客のインターネットやパソコンの困りごとを1秒でも早く解決するためだ。
ネット環境が整っているお客には見守りカメラと、データを保存するSDカードをセットで提案しているが、需要は意外にあるという。
最近、取り組み始めたのは「家電注文書」の記入。口頭での約束だけでは誤解が生じる可能性があるからだ。「テレビの注文が50Vなのか55Vなのか口頭では誤る可能性もある。万が一を想定し、注文書には注文日とメーカー名、型番、価格などを記入し、同社とお客様の控えを発行する。
一方、エアコンなど専門業者の取り付けが必須の商品では協力業者に委託する。大型冷蔵庫や洗濯機は自前で設置。設置方法は協力業者の知恵を借りたり、ユーチューブなどの動画でプロの施工を学んでいるという。
ケーブルテレビ会社をはじめ家電市場に新規参入する企業は多い。同社の受発注業務の取り組みはトラブルの少ない家電販売を行うためにも、おおいに参考になるだろう。