リフォーム店が電気店をオープン リアル店舗ならではの戦略的メリットとは
(神奈川県横浜市、柴田勝利店長)
神奈川県下で 住宅設備機器販売の多店舗展開を図る住宅リフォーム会社「ヤマシンホーム」(横浜市瀬谷区、大塚丈義社長)が、2025年11月に本業のリフォーム会社店舗ではなく、”まちの電気屋さん”の「都岡でんき」をオープンした。リフォーム店は敷居が高いが電気店は入りやすいという大塚社長の考えを具現化したものだ。食品スーパー「あおば」内に構えた30坪の売り場をどのように活かしているのか。リフォーム会社が経営するリアル店舗の電気店の戦略的メリットを探る。
▲都岡でんきの売り場
なぜ電気店を開設したのか?
電気店という集客装置を選択
リフォーム会社の電気店――。一見ありそうな店舗だが実際にはほとんど見かけない。それを実現したのがリフォーム業界でもユニークな経営者で知られる大塚社長だ。

同氏はOB客を大切にフォローし、リフォーム業界でも稀有な、顧客数のうちOB客の比率が7割という経営モデルを築き上げた。
だが、OB客の高齢化が進む中、同社の経営モデルは曲がり角を迎えつつある。OB客を守りながら新規客を獲得することが、大きな経営課題になっている。
そこで、大塚社長が選んだのは「電気店」を集客装置として活用すること。2025年11月に食品スーパー「あおば」内のドラッグストア跡地に30坪の都岡でんきを開業した。
店長の柴田勝利氏はこう話す。「リフォーム店単独で出店すればお客様のハードルは高くなるが、電池や電球などの最寄り品や照明、エアコンなど生活に密着した電気製品を扱うことでハードルは低くなる」
▲食品スーパー「あおば」の1階に売り場をオープン
▲食品スーパーの集客力を活かす
お客様に気軽に入店してもらうために、「暮らしのエネルギーの相談窓口」をコンセプトに掲げた。電気・住まい・省エネ・防災を“ワンストップで相談できる地域の拠点” として、幅広い暮らしの課題に対応する。
電池や電球の購入から、電気料金の見直し、省エネ相談まで幅広く対応することで、どんな人でも立ち寄りやすい店舗を目指している。
電力会社の料金プランを診断し電気料金や契約を見直す他、太陽光を設置した場合の節電プラン、最新の省エネ家電などを提案する。
▲太陽光・蓄電池を揃え「暮らしのエネルギーの相談窓口」をアピール
地域のお客様の来店状況も好調だ。実際、オープニングセールでは2日間で延べ250名を超えるお客様で賑わった。
集客力に優れた地域の買い物拠点の出店という戦略も功を奏したようだ。「店舗周辺は家電量販店やホームセンターが少ない上、地域の電気店も2店閉店した。(家電に関することで)困っていたお客様に喜ばれている」(柴田店長)。
コスモスベリーズの加盟は2025年10月。現在までの仕入れ実績をみると、数量ベースでは電池や電球、コンセント・配線器具、OAタップなど小物・最寄り品が多い。照明器具は粗利が高く売りやすいヤマダセレクトのLEDシーリング照明が中心だ。
現在は夏商戦向けの扇風機やサーキュレーターなどの季節商品がメインで、仕入れ実績の2割ほどヤマダ宅配を利用している。
前述したように、新規客開拓は重要な課題だ。電気店の開設だけでなく、同社ではショールームをフリースペース化する取り組みも進行中だ。当該スペースには「英会話教室」や「体操教室」を充てるなどユニークな取り組みをトライし集客を図っている。
▲小物・最寄り品の品揃えを充実
柴田店長の「電気店」活用作戦
住設の知見を活かした提案力が強み
ただ、異業種からの家電市場参入は容易ではない。そこでヤマシンホームでは人材を有効に活用する作戦に出た。柴田店長は電材卸と住設メーカーの両方を経験しており貴重な戦力。その経験を生かした取り組みが同店の運営を軌道に乗せつつある。
まず、着手したのが追い風の吹く LED照明の2027年問題。2027年末で一般照明用蛍光灯の製造・輸出入が禁止され、家庭や店舗では蛍光灯器具が手に入らなくなる。LED照明への切り替えが必須になるというわけだ。
LED照明の販促では、柴田店長の住設視点の提案力が照明器具の販売増につながっている。
例えばリビングのLED照明の買い替え時にはキッチンの手元灯や玄関灯、足元灯などを同時に提案する。

▲リビングのLED化をきっかけにアップセル
特にキッチン照明は「ベースライト+手元灯」が基本だが、さらにダウンライトやペンダントなどを組み合わせる提案が効果的だ。
住設メーカー出身の柴田店長の経験やスキルが十分活かされる提案術は、1件あたり10万円規模の販売に結び付くケースもあるという。
照明器具はリビングやキッチンだけでなく、納屋や物置などの小部屋の灯りも提案。その際は手頃な価格帯のヤマダセレクトを提案する。
「分電盤詐欺」対策も功を奏す
もう一つの追い風は最近急増している「分電盤詐欺」の対応策。電力会社や委託会社を名乗って「無料点検」「法定点検」などといって高額な分電盤交換契約を迫る手口だ。
「分電盤詐欺」から地域のユーザーを守ろうと、柴田店長は新聞折込で分電盤交換のチラシを2回ほど配布する。配布した翌日から問い合わせが増えるなどチラシ効果は上々だったという。
▲売り場でも「分電盤」の交換を訴求
分電盤の契約件数は13件。問い合わせに対する成約率は100%という驚異的な成果を上げた。まさに、同店が掲げる「暮らしのエネルギーの相談窓口」に通じるアプローチである。
「ホームセンターや量販店に出向いたユーザーは手間がかかる作業なので断られるケースもあったようだ」と柴田店長。ネットの書き込みには「ブレーカー交換の説明が分かりやすかった」という声も。

▲チラシではプロ仕様の電気工事を訴求
チラシの内容にも工夫を凝らしている。量販店との差別化を図ろうと、「ハウジングエアコン」や「マルチエアコン」を訴求したり、「隠ぺい配管」や「電源増設工事(エアコン専用コンセント)」などプロ仕様の専門工事をアピールする。
チラシのヒット率も特筆される。「チラシ効果によって、分電盤やLED照明の販売や設置だけでなく、コンセント増設やアンテナ設置などの小工事の問い合わせも増えている」と柴田店長。
ちなみに、LED照明の交換では次のような声もあった。「先日は玄関内の修理や照明取り付けありがとうございました。その上子供部屋の照明まで快く直して頂き助かりました」。安心できるまちの電気店として評価されているようだ。
マンスリーイベントを企画し実践
同店では1月から12月まで年間のマンスリーイベントを企画(9Pの表参照)。柴田店長と女性パート2名の人柄、店の雰囲気を知ってもらうイベントは重要な施策だ。
食品スーパーの集客力を生かし、継続的に開催することで新規客との心理的なハードルを低くし、お客様へのアピールとファン化を狙う。
売り場ではイベントに合わせて店内の模様替えや、イベントテーマに沿ってチラシの訴求商品を決めている。
イベントでは乾電池のつかみ取りやガラポン抽選、今年3月14日のホワイトデーにはプチギフトをプレゼントした。6月のエアコン祭りでは大抽選会を開催。
家電だけでなく、本業のリフォームビジネスにも確実につなげている。「リアル店舗にて暮らしの相談窓口となる」→「住まいの困りごと対応」→「リフォーム相談」という導線が生まれつつある。
実際、これまでもフルリフォーム(300〜400万円)を含む2件の成約に結び付けた。リフォーム店が「まちの電気屋さん」として相談窓口となり、新たな顧客接点を生み、リフォーム需要を開拓するという好循環が動き出している。