電気店

毎年3ケタの「新規客」を獲得!お客がお客を呼ぶ上手な仕組みの作り方

南団地店フタバ
(栃木県宇都宮市清原台、黒﨑敏明社長)
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現在の地域店の最重要課題といえるのが「新規客の獲得」だろう。特に地方では経済の疲弊とともに、少子高齢化や人口減の影響が直撃し、厳しい経営のかじ取りを強いられている。そうした中で、毎年3ケタの新規客を獲得している店がある。栃木県宇都宮市清原台の南団地店フタバ(黒﨑敏明社長)である。一見、ごく普通の地域店だが、客づくりにかけては県内でも有数の地域店。では、どのようにして毎年100件以上の顧客をつかんでいるのか。その具体策を詳しく見てみよう。

▲南団地店フタバの店舗外観

●お店もお客も新陳代謝

74歳から43歳にバトンを渡す

今年6月22日に開催された南団地店フタバの40周年の誕生祭。お客で賑わう店内で黒﨑社長は重大な決意を発表した。今年12月に社長を甥の木原達也氏に譲り、自分は取締役に就任するというのだ。

▲黒﨑敏明社長

74歳の黒﨑氏から43歳の木原氏への経営のバトンタッチである。後継者が決まっていない地域店は3分の2以上と言われる中で、地域店存続という意味でも同店のトップ交替は喜ばしい出来事だ。

「若い世代に店を任せると決めた。大切なお客様を守ってほしい」と黒﨑社長。木原氏は同店に入社して20年以上の押しも押されもしない大ベテラン。シニアのお困りごと解決では欠かせない存在であり、集まったお客に歓迎されたことは言うまでもない。

もう一つ、明るい話題がある。昨年4月に入社した木原氏の長男、颯汰(そうた)君(19歳)が電器店の従業員としてメキメキと頭角を現していることだ。
器用で誠実な仕事ぶりと釣りキチで知られる颯汰君。同店のニュースレターにも頻繁に登場し、鰤や真鯛などの釣果や魚料理などを披露する「そうたの釣り日記」は人気記事となっている。

▲木原達也氏と長男の颯汰君

▲「そうたの釣り日記」

フタバの店を語る上で欠かせないのが顧客との深い関係だ。それを物語る興味深いエピソードがある。今年10月27日に行われた「バス旅行」である。

6月の誕生祭のイベントで10万円以上のお買い上げ客に茨城県のひたち海浜公園でのコキア鑑賞と、那珂湊での食事(とれたてのお刺身定食)をセットにした旅行会だ。

▲ニュースレターの編集長、黒崎博子さん

2023年には120件の新規客

コキアとは秋になると鮮やかな紅葉を真っ赤に染め上げる鑑賞用の植物。ちょうど見ごろがバス旅行と重なった。

バス旅行では40名ほどのお客が参加。バスの中での飲み物やおつまみは同店が用意したが、お客からの有り余るほどの差し入れで車中はいっぱいになった。

その数ビール72缶、チューハイ24缶、焼酎のボトル、お茶に至っては100本余り。その他お菓子や菓子折りなど。「どっちが歓待されているのか分からないほど」と奥様の黒﨑博子さん。

「40年間、お客様が当店を育ててくれた」と黒﨑社長。ただ、時代が変化するにつれ、お客のライフスタイルやニーズも変わる。

既存客だけに依存せず、新規客を開拓することで、フタバは市場の変化に柔軟に対応してきた。2023年は120件の新規客を開拓。同店独自の新規客づくりの秘訣を探ってみよう。

●お客の声をビジネスに生かす

新規客開拓のツボ

まず、紹介したいのがニュースレター「でんきやくろこ新聞」だ。これは10年以上継続しており、現在の手書きスタイルに変えたのが8年ほど前。「パソコンから手書きにすることでお客様の反応が大きく変わり、問い合わせが随分増えた」と博子さんは話す。


▲修理やメンテ情報を積極的に発信

手書きの文章は、書き手の感謝の気持ちや思いやりを感じてもらいやすいというメリットがある。

それだけではない。ニュースレターの内容にも工夫を凝らした。家電製品や住設機器の修理やメンテのユーザー事例を積極的に発信。エコキュートでは光熱費削減の目安、補助金活用なども提案し、新規や買い替え需要を促している。

家電製品ではトラブル事例とその対処策を紹介。画面に縦線が入ったテレビの修理では、パネルを交換した事例を写真と文字で紹介。5年保証による無償での修理もアピールする。

最近では水回り機器のトラブル、特にトイレタンクの故障から便器の交換需要が増えている。これもニュースレター効果だ。便器の交換では必ず床や壁クロスなども絡めたトイレリフォームを提案し、契約に結びつけている。

ただ、こうした取り組みでは既存客の顧客満足度こそ高まるが、新規客獲得には結びつかない。新規客獲得の大きなファクターになっているのがニュースレターとコスモスベリーズのおすすめチラシを3,500枚、毎月セットにしてポスティングしていることである。


▲ニュースレターとおすすめチラシをセットでポスティング

同店の稼働顧客数は約500世帯。顧客のエリア周辺にも3,000枚のチラシを配布することで、新規客を増やしている。

「家電はともかく、エコキュートやトイレなどの住宅設備機器のトラブルはどこに頼んでいいのか分からないというお客様が多い。当店のニュースレターはこうしたお客様の橋渡し役になっている」(黒﨑社長)。

スマホ教室といすヨガ教室で客づくり

お客の声をワークショップ(体験型教室)に具現化している点も見逃せない。例えばスマホ教室。「スマホを買ったけれど使い方がちんぷんかんぷん」「娘や息子に聞いてもやさしく教えてくれない」「アプリの使い方が分からない」というお客の声に応えたものだ。

もう3年以上開講しているが、客足は衰えないばかりか回数を増やしている。当初は月1回開催だったものを月2回、しかも午前と午後の部に分けて開講するという人気ぶり。

▲スマホ教室といすヨガ教室の案内

スマホの講師はSNSで知った栃木県在住のプロの方で講師料は8,000円。受講料はワンコイン(500円)なので16人集まらなければ同店の持ち出しとなる。
持ち出しといっても数千円程度なので、博子さんは顧客サービスと割り切っている。情けは人のためならず。お客に親切にサポートすることで、その親切が巡り巡って店に返ってくると考えているからだ。

最近ではスマホ教室からスマホカフェに変更した。教室ではお客が手作りのクッキーやお菓子、野菜などを持ち寄ってくれるので、フタバではコーヒーをサービス。いつの間にかお客同士が仲良くなりカフェになっている。

スマホ教室では自然発生的なお客同士の語らいの場になっている。お客が新たなお客を呼ぶケースも少なくないようだ。

いすヨガ教室も月2回開催の、同店でも人気教室になりつつある。椅子を使うので足の痛い方でも大丈夫。伝統的なヨガのポーズや呼吸法を安全でしかも効果的に行うことができる高齢者向きの手軽な運動だ。

定年後の男の料理教室

年末にはコロナ禍で休止していた料理教室を復活する考えだ。誕生35年祭にキッチンコーナーをリニューアルし、レンジフードファンやIHクッキングヒーターや話題の調理家電を揃えた。

▲料理教室では話題の調理家電を体験してもらう

料理教室復活の企画も定年になったご主人が料理を習いたいというお客の声がヒントになった。定年後のシニア男性向けの料理教室は人気が高まっており、博子さんは「これはいける」と考えた。調理家電の販促にも生かせるし、第一線を退く黒﨑社長もやる気満々だ。

「ワークショップを通じてお客様同士が仲良くなればお客様の友人、知人へと顧客の輪が広がる」(黒﨑社長)。

フタバがコスモスベリーズに加盟したのは2007年6月。「東芝系列以外の家電製品を扱いたかった」と黒﨑社長。他系列の家電製品の仕入れだけでなく、直取りの際にはヤマダデンキの品揃えや接客手法を学び自店に生かしている。

「当店は今年で40年。これからの40年、店を成長させていくにはお客様の声を聞き、量販店の売り方を学ぶ取り組みも重要」と黒﨑社長は話している。

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